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次元を越えた戦い M15プレリリース血風録

公開日: 投稿者:ちよがみ 日記 ,

「ヴェールの呪い」に侵されたプレインズウォーカー、ガラク。

2メートルをゆうに超す巨体に並ぶほどの大斧を持つ、雄々しくも禍々しい姿……の、店頭ポップが飾られた、ホビーステーション金沢店。

私は、さらなる戦いを求め、自転車を走らせその場所へやってきていた。

大人気カードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」通称MTGには、最新のエキスパンション(拡張パック)発売のちょうど一週間前に催されるイベントがある。「プレリリース・パーティ」と呼ばれるそれは、発売間近のエキスパンションを「プレリリース・キット」という形で一足早く手に入れ、その中に入っているカードでデッキを構築し、対戦する公認大会である。

このプレリリース・パーティに参加するべく少なからぬ苦労の末に訪れたのだが、どうやらこのイベントには、参加事前予約というものがあったらしい。

プレリリース・キットには、MTGの5つの色――赤、青、緑、白、黒に対応する5つの種類がある。当然ながら、色によって入っているカードがある程度異なり、また、キットの中には必ず1枚、色に対応したフォイルカード(光る加工のされたカード)が入っている。

私は歯噛みした。戦いは、今日この日よりも、ずっと前に始まっていたのだ。予約した者がいるということは、キットもその下に優先的に行き渡る――それは、予約の人数次第では私が望む青、または白のキットが手に入らない可能性があるということを意味する。見ると、予約者の列の中にはサークルの仲間達の姿もあった。抜け駆けか、と苦々しく思う一方でふと考えた。大会という戦場に立つ以上、普段は気の良い仲間でも、今この時だけは倒すべき敵なのだ。成る程、と己の中にある腑抜けた心を戒め、待っている間の暇潰しにとりあえず店頭のカードを眺めることにした。

青

当日枠の申し込みに遅れそうになったり登録に手間取ったりと紆余曲折あったものの、最後に残った青のキットを手に入れ、既に席についていた仲間達のもとへと進むことができた。キットの中では緑が人気のようで、青は最後まで残る程度には不人気のようであった。面白い。ならば、不人気なりの力を見せつけてやるとしよう。

開始時刻になり、キットを開封すると基本セット2015のブースターパックが6つ、各色のキットに対応したフォイルカードを含む専用パックが1つ、ちょっとした解説カード、そして《屠殺者ガラク/Garruk the Slayer》の大判カードが入っていた。

ガラク

 

半端じゃないほどにつよそう。プレリリースイベントでは、このガラクと戦うイベントもあるようなのだが、今回は行われなかったので《中略/Syncopate》。

参加者全員が席についたところで、店員が大会の開始を宣言した。参加者がキットを開封し、デッキを構築するために与えられた時間はわずか30分。周囲が慌ただしさを増し、私もまた、妙に剥がしづらいテープに苦戦しつつキットを開けた。

青のキットに入っていたフォイルカードは《気紛れな詐称者/Mercurial Pretender》。場に出ている自分のクリーチャーのコピーとなれる上、コストさえ支払えば任意のタイミングで自身を手札に戻して再利用、または除去の回避もできるカードだ。そして、ブースターパックから出てきたレア以上のカードは《地割れ潜み/Chasm Skulker》《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》《スリヴァーの巣/Sliver Hive》《鎖のヴェール/The Chain Veil》《嵐潮のリバイアサン/Stormtide Leviathan》そして《テーロスの魂/Soul of Theros》。(MTGのパックには必ず1枚はレアか神話レアのカードが入っている)

開封を終えて持ち上がるのは、何色を軸にして最大5回戦という長丁場を戦い抜くか、という問題であった。6パックと少しに加え、支給される基本土地という限られたカード、そして30分という極めて短い時間、この状況下で確実に戦えるだけの性能を持ち、なによりも自分が使っていて楽しめるだけのデッキを構築しなければならない。

かつてミラージュブロック~マスクスブロック期に活躍し、その柔軟かつ独創的な発想力から数々のデッキを構築、後の「5CG」「イタリックブルー」といった名デッキの礎(自称)ともなった、山田という決闘者はこのように述べている。

「リミテッドは構築戦の4倍好き」

リミテッド、すなわち限られたカードの中でデッキを組む戦いの中では、普段は使わないようなカードにも1枚1枚目を通し、かつ手に入った他のカードも勘案した上で採用するか否かを考えなければならない。得られた細い線を紡ぎ合わせてできたコンボ、それを搭載したデッキ、その周囲を支えるカードを選び、構築する。その過程をも存分に楽しむこと――それこそが、こういったイベントに参加する意義のひとつであると考える。

(参考:MTG既知外列伝

手に入ったカードを色別に分け、その内容を確認する。青のキットを選んだだけあり、優秀な青の小型クリーチャーが多い。この時点で、青の採用は確定。クリーチャー同士の殴り合いになりがちなリミテッドでは、ある程度以上の性能を持つクリーチャーはそれだけで重宝する存在だ。同様の理由と、切り札となりえる《テーロスの魂/Soul of Theros》の存在から白も採用。少し物足りなさも感じるが、今回はこの青と白のデッキで戦う――と思った刹那、隣席の会話が漏れ聞こえた。

「これなら3色も全然ありだな」

3色!そういうのもあるのか!しかし、2色以上のマナを出せる土地が手に入らなかった以上、使用する色を増やすことは即ち必要なときに必要な色のマナを出すことができず、事故の可能性を上げることを意味する。だが、青と白のカードだけでは力不足、と思えてならないのも事実。そのとき、黒のカードの束に置いていたこのカードが目に飛び込んできた。

刺し傷/Stab Wound (2)(黒)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは-2/-2の修整を受ける。
エンチャントされているクリーチャーのコントローラーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは2点のライフを失う。

必要な色マナが黒ひとつだけという拘束の弱さ。タフネスが2以下のクリーチャーを対象にすれば破壊不能の能力すらすり抜ける除去、タフネスが3以上でも弱体化させ、立ち回り次第ではダメージソースにもなりえる万能性。このカードが手元になんと2枚。

青と白、その2色に足りなかったのは積極的に相手から命脈を奪い取るようなストロングさだったのだ。ここに黒を加えた結果、爆誕したのが奇しくも私のフェイバリットカラー、青白黒によって構成された超絶デッキである。《天麗のペガサス/Sungrace Pegasus》《クイックリング/Quickling》《天空のアジサシ/Welkin Tern》などの軽量飛行アタッカーで相手のライフを削り、《抑圧的な光線/Oppressive Rays》《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》《霜のオオヤマネコ/Frost Lynx》などで相手の戦線を硬直させ、隙を見て《無私の聖戦士/Selfless Cathar》での全体強化や《地割れ潜み/Chasm Skulker》《テーロスの魂/Soul of Theros》での打撃を叩き込む。このデッキで、私はこの大会を勝ち抜いてみせる!

1戦目:VS緑黒

なんと初戦の相手は私のサークルの仲間、セロリであった。「初戦身内とかwwwwwwwwww」などと言いつつ互いに気持ち悪いニヤニヤ笑いを浮かべながら着席はしたが、その態度に反して両者の双眸は爛々とし、相手の喉を食い破る確実な機を伺っていた。私から見れば可愛い後輩ではあったのだが、今の奴は私がこの基本セット2015の中で最も欲していたカード《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》を何事もなげに引き当てた仇敵。生かして帰すわけにはいかん。

1R:MTGの対戦は基本的に2本先取で行われる。私の駆る《天麗のペガサス/Sungrace Pegasus》が1点ずつセロリのライフを削り、ペガサスの持つ絆魂によりその分私のライフも増えていく状況が続いた後、このデッキ最強の切り札《テーロスの魂/Soul of Theros》が着地。

テーロスの魂/Soul of Theros(4)(白)(白)
クリーチャー — アバター(Avatar)
警戒
(4)(白)(白):あなたがコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+2/+2の修整を受けるとともに先制攻撃と絆魂を得る。
(4)(白)(白),あなたの墓地にあるテーロスの魂を追放する:あなたがコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+2/+2の修整を受けるとともに先制攻撃と絆魂を得る。
6/6

その圧倒的な全体強化の効果により、まさに蹂躙というべき戦局となった。セロリのライフを0にしたその瞬間、私のライフは73まで膨れ上がっていた。(MTGの初期ライフポイントは20です)

2R:と思ったら2本目は自分がなにもできずに負けた。

3R:一方次の試合はセロリが何もできなかったためひたすら殴って勝った。

 

2戦目:VS白緑

1R:今度もなにもできずに負けた。

2R:またなにもしてこなかったので勝った。

3R:3本目にしてようやくまともな試合になり、《天麗のペガサス/Sungrace Pegasus》+《名誉の印/Marked by Honor》によってライフを大幅に回復しつつ地道に打撃を加え、相手の攻撃は《精油の壁/Wall of Essence》によってガード。相手のライフを2まで削り、次のターンに確実に仕留めるべく少し待つが、ここで相手側に降臨する《毅然たる大天使/Resolute Archangel》。20まで回復する相手のライフ。息切れした私は32あったライフを一気に削られ敗北した。

 

3戦目:黒緑

1R:色々と失念したが《イニストラードの魂/Soul of Innistrad》とか出された覚えがあるのに勝ったからおそらく《刺し傷/Stab Wound》とかが大活躍したと思う。

2R:続く試合、《イニストラードの魂/Soul of Innistrad》が前回活躍できなかった憤懣ゆえか黒と緑の軍勢とともに遺憾なく大活躍し為す術無く蹂躙された。私のヒーロー、《テーロスの魂/Soul of Theros》は2枚目の平地を引くことができず、手札で腐っていた。

3R:お互いクリーチャーが並ぶ膠着状態が続くものの、相手の場には既に《寛大な拷問者/Indulgent Tormentor》が君臨していた。クリーチャーのサイズで劣るこちらはこのままジリ貧になっていくこと確実、《テーロスの魂/Soul of Theros》は前回同様2枚目の平地が引けずに手札から出られずにいる状況、地道にサイズアップを続ける《地割れ潜み/Chasm Skulker》でいつ攻勢に出るか……と考えていたところでドローしたカードは《平地/Plain》。即座にセット、《テーロスの魂/Soul of Theros》をキャストした瞬間相手は投了。互いに身を削り合うギリギリの戦いだった。

 

4戦目:白黒緑

1R:相手がキャストした《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder》で確定単体除去《肉は塵に/Flesh to Dust》が墓地に落ちるのを見る。そんなものが入っているのか……と冷や汗をかいたが、これで除去が飛んでくる危険はあるまい、と考え温存していた《テーロスの魂/Soul of Theros》をキャスト。一気に勝負を決めにかかる、と思ったところで2枚目の《肉は塵に/Flesh to Dust》が直撃、爆発四散。切り札を失った私の前に相手の《ゼンディカーの魂/Soul of Zendikar》が降臨、《テーロスの魂/Soul of Theros》と同等というその圧倒的なサイズの前にあっけなく屈した。

2R:相手の《屍術士の助手/Necromancer’s Assistant》をどうやって退けるか、を考えていたところで《不動のアジャニ/Ajani Steadfast》を出される。その力によって超強化された《屍術士の助手/Necromancer’s Assistant》に数度殴られ、突破することもかなわず終了。

 

4戦目が終了したところで時間切れ。結果、4戦2勝2敗。参加賞のパックからは《包囲ドラゴン/Siege Dragon》。

MTGの大会に出場するのは初めての経験であったが、戦いの中のあらゆる要素が非常に愉しいものだと感じられた。パックを開封して中身を確認すること、デッキを構築すること、対戦中に思考し、勝ち筋を見つけ出すこと……。機会があるならば、再びこの殺伐としない戦いの空気を味わいに戻ってきたいものだ、と思った。

なお、私は昼食を食べ損なっていたため対戦中非常に辛い思いをしたことを付記しておく。昼からの大会に出場する際には、軽くでも食事をとっておくとよい。私との約束だ。

 

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