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なりきり!名探偵シャーロック・ホームズ 2度目の告白2

公開日: 投稿者:管理者アカウント 未分類

投稿遅れましたことお詫びいたします。また時々修正しながら書きます。

 

ある年の夏,一人の男が天野川村の裏山にある公営墓地を訪れていた。彼は手慣れた様子で箒を使って枯葉や雑草を掃き集め,墓石に水をかける。御影石の表面に付いている汚れをまず洗い流し、後に布で拭き上げるためだ。文字の部分は特に汚れが溜まりやすいから一字,一字,丁寧に溝に沿って中のゴミを掃き出させる。

周辺の掃除が終わったら,柄杓で手桶の水をかけてあげる。そして,持ってきたヒマワリを水の張った花立に入れる。これは生前,彼女が好きだとよく言ってたもので,笑顔も花のように開いていたので彼女らしいということから,このヒマワリを選んでいた。実際,彼もこの花を見るたび彼女を思い出してしまう。最後にマッチで線香をあげて,墓石の前で合掌する。

目の前には彼女———羊草一華の名前が刻まれていた。

彼はこの作業を繰り返す中で彼女との懐かしい記憶を遡っていた。初めて会った展覧会の時は内心とても緊張したな,とか,あの年の夏には一華と海水浴場に行った後には村の縁日に行って一緒に花火を見た,とか、色々なところに出かけては写生にも付き合ってもらった,など様々な淡い記憶が自然と去来してくる。

あの頃は本当に楽しかった。小・中ではいじめられていた俺は他にできることは一つもなかったけど,絵だけは人並みに描けれた。高校に入ってからはスランプに入ってしまって作品の方向性を失っていたけど,彼女との出会いで取り戻すことが出来た。一華の批評を参考にして観客が見る視点がやっとわかって,どこに力を注いで描けば良いのか,それを表現するにはどのような技術が必要なのか,また自分のオリジナリティとは何か,など色々なことに気づけることができて,今では一般に名の通る画家をしている。彼女には感謝してもしきれない。

また美術部で、彼女を練習にと模写したりするにつれてだんだんと青臭い恋心を抱いてしまって,彼女の笑顔見たさに色々な観光名所に連れ回しては,写生して見せてあげたな。県内の観光地だとX城址,Y庭園,Z岬とかを巡った。最後に行った仁風閣で一華に思い切って告白してしまったっけ,あれはぎこちない告白で恥ずかしかったけど,渡したプレゼントを受け取ってもらって良かった。そういえばあの告白の結末はどうだったかーーー。

ここで彼はあの事件のことがフラッシュバックする。昭和最後の凄惨な事件,A県女子高生バラバラ殺人事件。7/11,A県の山奥にて彼女-羊草一華は誰者かによって鋭利な刃物で切り裂かれ,ブルーシートに包まれた状態で発見された。頭部と三日月のペンダントは現在に到るまで発見されていない。犯人の遺留物は何一つなく,山奥での犯行であったため犯人の特定は困難を極め,A県にて警察1000人を動員した不審車の町人の聞き取り調査が行われたが、努力むなしく結果には至らなかった。彼女の内ポケットには学生証のほかには携帯や何もなかったらしい。

なぜ彼女は殺されてしまったのだろう。なぜ彼女が選ばれてしまったのだろうか。なぜ一華だけがーー。

そんな答えの見えない疑問が螺旋状に連なって浜本の心にどす黒く沈殿してゆく。

 

「おい,浜本」

急に声をかけられて振り向いてみると

「なんだ榊原刑事ですか,お久しぶりです」

「あぁ一年ぶりだな」

夏だというのに榊原はサングラスにベージュのトレンチコートを着て、肩に大きめの花束を担いでやってきた。榊原はしゃがみこんで墓石の前に花束を置くと,合掌した。

「今年もやってんのか,羊草一華の墓参り」

「えぇ,今年で10回忌なんです。なので今年は彼女が喜びそうな花を選んでいます」

「そりゃ,羊草一華も喜ぶだろう」

夏の爽やかな風が墓地を駆け抜けて,木々や花を揺らす。

「そういえば他のやつはどうした?毎年のように一緒に来てた,お前の友達の島谷や幼馴染の女の子は」

浜本は口を真一文字に結び,やや躊躇った後に言った。

「・・・二人とも去年のうちに亡くなりました。一人は事故死,もう一人はストレスによる自殺・・・らしいです」

「・・・すまん,そりゃ聞いて悪かった」

 

二人の間に沈黙が訪れる。榊原は眉をひそめて居心地が悪くなったのか胸ポケットからKENTを取り出して,ライターに火をつけた。彼は浜本にもタバコを勧めてみたが,彼はいらないと手で身振りしてみせた。榊原は釣れないやつと思って,一人でフィルターから吸い込んだ煙を肺に入れて空中にフカしている。もちろん,墓石に当たらないように上を向いてだ。そんな時間が10分たったころ,榊原が話を切り出して来た。

「浜本,お前もわかっているだろうが事件の時効が今年で切れる,つまりこの事件の捜査は今年で完全に終了する」

浜本の肩がびくりと震える。彼自身そんなことはわかっていた。だけど認めたくなかったのである、なぜならそれは彼自身としてまだ多くの疑問を残したこの事件について,彼女の情報について知りたいことがまだ多かったからだ。

「・・・警察の方で,事件についての新たな情報はありましたか・・・?」

榊原は首を振る。

「なにせ10年も前のことだ,なにも出てこないよ。今は交通課の方でビラの作成と配布で情報提供を呼びかけているが,なにも成果は出て来てない,この吸い殻の一片ほどもな。それに今の刑事課では新たに重大事件が発生して,そこに人員が割当たられちまっていやがる,さすらい者の俺も動員と来たもんだ」

浜本は俯いたまま

「・・・ということはこのまま事件は時効を迎える・・・ということですか・・・。解決しないまま・・・一華の思いも聞けないまま・・・」

榊原は右手のタバコをふかしながらはっきりとした口調で告げる。

「・・・そうだ。このまま事件は解決することはできない。刑事課だけじゃな」

浜本は悔しさのあまり涙が頬を伝い,全身が震えて拳は握りこぶしのまま硬く握られている。いかなる事件は必ず解決するとは限らない,そう彼自身よく分かっていながらも,心のどこかではこの事件解決への糸口が見つかるはずだ,いや見つかるべきだと長年思い続けていた。その長年の思いが目の前のよく知る人物から終了宣言させられてしまう,彼の心情は想像に難くない。彼はしゃがみこみ泣き叫ぶ。その光景を見かねた榊原は肩を貸してやる。

「おいおい大の大人が男泣きかよ,みっともねぇ,泣くときは母ちゃんが死んだときに取っとけ」

榊原に腕を持ち上げられた浜本の顔は涙と鼻水でめちゃくちゃになっている。

「それにな,まだ事件は終わっちゃいねぇんだよ,浜本」

浜本は泣くのをピタリとやめて

「そ・・・それって・・・どういうことなんですか!榊原さん!」

「詳しいことは後だ,お前に会わせたい奴がいる。そいつならこの事件を解決できるかもしれない。(腕時計を確認する)・・・時間がねぇな。しゃあーねぇ!!俺のフェラーリに乗りな!!」

 

 

※本編に関係ない茶番(フェラーリのところからお読みください)

「・・・本当ですか!!・・・」

浜本たちは墓地を出ると隣接する公営駐車場に出て来た。駐車場には彼らの他にも墓参りにきているようで数台の車が止まっている。しかし,榊原の言うフェラーリのような高級車はどこを見渡しても見当たらない,あるのはコンパクトカーや軽の車ばかりだ。急いてしまう浜本はつい口調を荒げてしまう。

「榊原さん!!どこにあるんですか,フェラーリ!!この駐車場には普通の車しかないじゃないですか!!」

「焦っちゃだめだぜ,浜本。ちゃんとここにあるじゃねーかよ!!この車の後ろによー!!」

榊原は浜本の前方の車を指差して叫んだ。すると奇跡か偶然だろうか,その声に呼応するように前方の車がゆっくりと発進してゆく。リアランプ,タンデムシート,マフラー,中央下のエンジン,特徴的なヘッドライトの順にその姿があらわになってゆく。

「あっただろう〜〜〜!!![フェラーリ]が!!!どうだ,イカすだろう!!」

期待していた車と360°違っていて唖然としてしまった,浜本はやっとのことで言葉をひねり出すことができた。

「・・・ただの新聞配達用のバイクじゃないですか!」

そんな叫びが森中をこだまして,木々で羽を休めていた鳥たちが一斉に大空へ羽ばたいた。

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